Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第2章 初恋は、0と1の境界線上で
「……私、……っ」
「…………?」
「……ごめんなさい、……今は、まだ……言えなくて……っ」
嬉し涙を浮かべながらも、拒絶に近い沈黙を返してしまう自分。
爆豪は、彼女の瞳の奥に潜む深い葛藤に気づき、わずかに眉を寄せた。
「……焦らしてんのか。……それとも、他に理由があるのか」
「……違うんです、……そうじゃなくて……っ」
爆豪は、腕の中で揺れる彼女の瞳をじっと見つめていた。
そこにあるのは拒絶ではない。
今の自分では太刀打ちできない「現実」という名の高い壁。
だが爆豪は、超えられない壁を前にして引き下がるようなタマではなかった。
(……事情があるなら、全部ひっくるめて引きずり出してやるよ)
爆豪はふっと表情を和らげると彼女の額に、慈しむような優しい口付けを落とした。
「……今はまだ言えねぇっつーなら、それでいい。テメェが俺の前にいりゃ、今は十分だ」
「……BLAST……」
「だがな、逃がさねぇぞ」
その瞳には、獲物を決して離さないという確固たる執念と、それ以上に深い情愛が宿っていた。
嫌がる気配がないどころか、されるがままに自分に身を預けてくる彼女。
爆豪は心の中で、静かに、けれど苛烈に誓う。
(……ゆっくり、俺なしじゃいられねぇようにしてやる)
爆豪は彼女の体を支え直すと、少し照れくさそうに話題を変えた。
「……おい。次、またどっか出かけるぞ。この世界なら、どこだって行けんだろ」
「……! いいんですか……?」
エミリアの瞳が、パッと明るく輝いた。
孤独に生きてきた彼女にとって、それは夢にまで見た言葉だった。
「はい! 行きたいところ、たくさんあります! 友達ができたら、いつか一緒に行きたいって、ずっとリストにしてたんです!」
「……友達、ねぇ。……まぁいい、言ってみろ」
爆豪が苦笑いしながら促すと、彼女は指を折りながら堰を切ったように話し始めた。
「あの、『浮遊庭園のカフェ』で雲のケーキを食べたいです! それから、『星降る砂漠』でオーロラを見たり……あ、『深海のクリスタル洞窟』も綺麗だって聞きました! それから……」
さっきまでの沈鬱な空気はどこへやら、子供のように瞳を輝かせて提案する彼女を、爆豪は思わず細めた目で見つめていた。