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Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】

第2章 初恋は、0と1の境界線上で


入り江に響くのは寄せては返す波の音と、爆豪の胸に顔を埋める彼女の、途切れ途切れの呼吸の音だけだった。
爆豪は何も言わなかった。
その腕に力を込め、壊れ物を包み込むように彼女の背を撫で続ける。プロヒーローとして戦う時の無骨な手つきとは違う、戸惑いと慈しみが混ざり合った静かで優しい抱擁だった。


「……ひっ、……ふ、……っ……」


やがて、激しかった彼女の肩の震えが、少しずつ小さくなっていく。
彼女が顔を上げたのは、砂浜を洗う水音が何度目かに繰り返された後だった。
赤く腫れた瞳に濡れた長い睫毛。
爆豪はそれを正面から見つめると、躊躇いながらも親指を伸ばし、彼女の頬に残る涙の跡をそっと拭った。


「…………落ち着いたか」

「……はい。……すみません、急に」


エミリアは俯き自分の指先をいじった。
爆豪の手が触れた場所が、まだ熱を持っている。
爆豪は彼女の顔を覗き込むようにして低く、確かめるような声を出した。


「……おい。……触られるの、嫌じゃねぇのか」


あの日、自分の衝動で彼女の『初めて』を奪い、傷つけたのではないか。
その疑念が爆豪の声を微かに震わせる。


「……テメェが嫌だってんなら、俺はもう二度と……」

「……嫌じゃ、ないです」


彼の言葉を遮るように、エミリアがはっきりと答えた。
彼女は再び顔を上げ、潤んだ瞳で爆豪を真っ直ぐに見つめる。


「……あなたの手、温かくて、……すごく、安心します。だから……嫌いになんて、なりません」


その言葉は爆豪がこの数週間、自分自身にかけていた呪いを解くのに十分すぎるほど優しかった。
爆豪は目を見開きそれから深く、深く溜息をついて顔を逸らした。
その横顔は夜の闇に隠しきれないほど、赤く染まっている。



「……なら、いい」



波音が、二人の間に流れる切ないほどの静寂を埋めていく。


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