Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第1章 ようこそ『ZERO WORLD』へ
「ただのゲームじゃねーよ。あそこは『もう一人の自分』になれる場所。それに、生体認証(ミラージュ)でログインするから、個性の有無とかランクとか、全部リセットされるんだ。プロヒーロー『大・爆・殺・神ダイナマイト』じゃない、ただの一人の人として過ごせるんだぜ? ストレス発散には最高だって」
「……全部リセット、だと?」
俺の手が止まった。
「そう。個性が『全く』通用しないんだよ。お前のその爆破も、あっちじゃ火花一つ、エフェクト一つ出せねぇ。全員が平等に無個性として過ごす、徹底したフラットな世界なんだ。けど、だからこそ『魂の強さ』だけが評価される。有名人も一般人も、あそこじゃ関係ねぇ」
「個性が、これっぽっちも出せねぇ……?」
右手の掌を無意識に見つめる。
物心ついた時から、俺の人生は「個性」とセットだった。
強さがすべて、個性がすべて。
それが当たり前の世界で、すべてが「0(ゼロ)」に還元される場所。
「……別に、やりてぇわけじゃねぇ。だが、イメージアップだの何だの言われない場所ってのは、少しはマシかもしれねぇな」
「だろ!? しかもさ、そこですげー稼いでる奴もいるんだぜ。バーチャルだけど、現実の仮想通貨とリンクしててさ……エミリアって歌姫、知ってるか? 彼女のライブ、心踊るぜ!」
「知るかよ。……チッ、やり方教えろ。一回覗くだけだ」
雁字搦めの現実から、ほんの一瞬だけログアウトする。
それが、俺自身の首を絞める新たな『執着』の始まりになるとは、この時の俺は思ってもいなかった。