Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第2章 初恋は、0と1の境界線上で
「……クソがっ!!」
都心にあるマンションの一室。
デバイスを脱ぎ捨てた爆豪はベッドに倒れ込み、枕を力任せに叩きつけた。
網膜にはまだ、花火の光に照らされた彼女の瞳が焼き付いている。
唇を支配していたあの熱が、現実(リアル)に戻ってもなお、心臓の奥でくすぶり続けていた。
「自制もクソもねぇだろうが……! 何やってんだ俺は……ッ」
学生時代ならまだしも、今は百戦錬磨のプロだ。
どんな極限状態でも冷静沈着、最適解を導き出すのがトップヒーローの矜持。
それなのに、エミリアを前にして積み上げてきた理性が一瞬で塵になった。
「……謝って済む話じゃねぇだろ……合わせるツラが、どこにある」
その日から、爆豪の日常は目に見えて崩れたーー。
現場の空気はピリピリとした緊張感とは別の、どこか「噛み合わない」不協和音に包まれていた。
「……ダイナマイト。今の制圧、コンマ数秒の遅れがあった。君らしくもない」
現場指揮を執っていたベストジーニストが、首元の繊維を整えながら爆豪を鋭く見据えた。
「……あァ? 捕まえたんだから文句ねぇだろ」
「結果の話ではない。君の『芯』が揺れていると言っているんだ。その乱れは、いずれ致命的な隙になる。……今日はもう下がりなさい。頭を冷やすんだ」
師匠とも呼べる男からの容赦ない指摘に、爆豪は言い返す言葉も見つからず、ただ苦々しく顔を歪めて現場を後にした。
その日の夜。
爆豪は、緑谷と上鳴に半ば強引に呼び出され、行きつけの静かな居酒屋の個室にいた。
「……んで、俺を呼び出して何の用だ。手短に言え」
「かっちゃん……、最近本当に様子がおかしいよ。ジーニストさんにも指摘されてたでしょ?」
緑谷が真剣な面持ちで身を乗り出す。
隣では上鳴が、ジョッキを置くのも忘れて爆豪を凝視していた。