Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第2章 初恋は、0と1の境界線上で
夜空を震わせる爆音だけが、今の二人を繋ぐ唯一の音だった。
天空には今夜一番の光の花が咲き乱れているというのに、特等席に並んだ二人は、ただの一度も顔を上げることができなかった。
ーードォン! ドォォォン!!
やがて、祭典のフィナーレを告げる特大の連発花火が始まった。
遠くの観覧席からは、割れんばかりの歓声と拍手が響いてくる。
だが、この竹垣に囲まれた二人だけの空間には、硝煙の匂いと、重苦しいまでの沈黙だけが停滞していた。
空を見上げぬまま、音だけを聞く二人。
煌びやかな光が、動かない二人のを照らし出していた。
不意に、爆音の余韻が夜の闇に吸い込まれ、完全な静寂が訪れる。
「…………悪い」
絞り出すような、掠れた声だった。
爆豪は彼女の顔を見ることさえできず、ただ一言、それだけを残した。
「……今日は、もう行く」
次の瞬間、彼の姿が青白い光の粒子へと変わり、夜風にさらわれて消えていく。
「……あ、…………」
隣に残されたのは温もりの残る茣蓙と、彼が掬ってくれた小さな金魚のデータアイテムだけ。
エミリアは、彼がいたはずの虚空を、ただ茫然と見つめていた。
「……BLAST……」
その名を呟く声も、震えて形にならない。
彼女は震える指先でログアウトボタンを押し、光の渦の中へと沈んでいった。
バーチャル世界に、冷たい夜風だけが吹き抜ける。
二人の「初めて」を飲み込んだ『ツクヨミ』の夜が、静かに更けていったーー。