Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第2章 初恋は、0と1の境界線上で
人混みを抜けた先に、懐かしい水音が聞こえてきた。
「あ……金魚掬い。……やってみたいです」
「あぁ? ……んなもん、データのゴミだろ。……まぁ、やりてぇなら勝手にしろ」
興味なさげに鼻を鳴らす爆豪の横で、エミリアは意気揚々とポイを構えたが……
「あ……っ。……ああっ!?」
ポイを水に浸した瞬間に紙が破れ、金魚は尾ひれを振って逃げていく。
二回目、三回目と挑戦するも、彼女のポイは一瞬で無惨な姿へと変わっていった。
「……うぅ。……金魚さん、意外と速いです……」
あまりの不器用さに肩を落とす彼女の横から、溜息混じりの手が伸びてきた。
「どけ。……見てろ、こうすんだよ」
爆豪はしゃがみ込むと、鋭い集中力で水面を見据えた。
無駄のない動きでポイを滑らせ、一瞬の隙を突いて尾ひれを跳ねさせないまま鮮やかな朱色の金魚を掬い上げる。
「わぁ……! すごい、BLAST!」
「……ほらよ。テメェが下手すぎるだけだ」
彼から手渡された小さな金魚を、エミリアはまるで宝物のように見つめた。
胸の奥がじんわりと温かくなっていく。
やがて二人は、喧騒を離れた高台にある特別観覧席へと辿り着いた。
そこは、池の上にせり出すように設置された茣蓙の席で、周囲の視線を遮るように竹垣で囲まれている。
「……やっと落ち着いたな」
「そうですね……。ふふ、色々食べ過ぎちゃったかもしれません」
二人は並んで茣蓙の上に腰を下ろした。
夜空を待つ静寂の中、エミリアがポツリと独り言のように言葉をこぼした。
「……私、こうやって誰かと一緒に花火を見るの、人生で初めてなんです」
「……あ?」
不意の告白に爆豪は隣に座る彼女を二度見した。