Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第2章 初恋は、0と1の境界線上で
あまりの混雑に、二人の距離が離れそうになる。
爆豪は立ち止まって不機嫌そうに舌打ちをすると、彼女の細い手首を掴み、そのまま掌を滑らせて指を絡ませた。
「……ッ!?」
「……逸れたら面倒だろーが。……黙って付いてこい」
「……あ、……はい……っ」
繋がれた手から、仮想世界(データ)のはずの体温が伝わってくるような錯覚に陥る。
「デート」という単語が、エミリアの脳内で警報のように鳴り響いた。
繋がれた手にばかり意識がいってしまい、足元がおぼつかなくなる。
前を歩くBLASTの耳が心なしか赤くなっていることに気づいた瞬間、彼女の緊張は限界を超えた。
「(……どうしよう。心臓の音が、ログインしてるデバイスまで突き抜けそう……)」
二人は一言も喋れぬままただ強く手を繋ぎ、花火が待つ特等席へと歩みを進めた。
「……おい、次はあっちだ。美味そうな匂いがしてんぞ」
爆豪は繋いだ手を離さないまま、屋台がひしめく通りへとぐいぐい突き進んでいく。
「あ、BLAST、待ってください……! あの、これ、私が出します。さっきのりんご飴も、焼きそばも全部出してもらっちゃって……」
エミリアが慌てて財布(メニューウィンドウ)を開こうとするが、爆豪はそれを片手で制した。
「いらねぇ。テメェは大人しく食ってろ」
「でも、申し訳ないです……私の方が誘ったのに」
「あー、……いいか、これは先週の『礼』だ。あのパスの価値を考えりゃ、これくらい安いもんだわ。……分かったら有り難く受け取れ、このバカ」
ぶっきらぼうだが、その声には彼女を気遣う響きが含まれている。
エミリアは「……ありがとうございます」と小さく呟き、彼が差し出してくれたイカ焼きの串を、大切そうに両手で受け取った。