Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第2章 初恋は、0と1の境界線上で
祭典の狂騒から一夜明けたそこはいつもの穏やかな時間を取り戻していた。
青い光が満ちる入り江に足を運ぶと、そこには昨日、世界を震撼させた女神の面影など微塵も感じさせない、地味なフード姿の彼女が座っていた。
「…………」
爆豪はその背中を見て、知らず識らずのうちに深く息を吐き出した。
周囲の熱狂も、耳を劈く歓声もない。
ただ、水面が揺れる音だけが響くこの場所に彼女がいる。
その事実に自分の肩の力が抜けていくのが分かった。
「……よぉ」
「……あ、BLAST。お疲れ様です」
彼女がゆっくりと振り返る。
昨夜、光の翼を広げて歌っていた人物と、目の前でぼーっと座っているこの女。
そのあまりのギャップに、BLASTの口元から「ふっ……」と堪えきれない笑いが漏れた。
「……何ですか、急に。……変な顔して」
彼女が不満げに頬を膨らませ、フードを深く被り直す。
「……いや。昨夜のあのアホみたいに神々しい『歌姫』様が、今はこんなところでシケた面して座ってんのかと思ったらよ。……おかしくてな」
「……ひどいです。あれは、その……お仕事モードなだけですから。こっちが本当の私なんです。……そんなに笑うなら、もう歌ってあげませんよ」
「ハッ、拗ねんなよ。……別に、こっちの方がマシだっつってんだわ」
BLASTは彼女の隣にどさりと腰を下ろした。
「こっちがマシ」という不器用な肯定に、彼女の尖らせていた唇が少しだけ緩んだ。