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Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】

第2章 初恋は、0と1の境界線上で


流れるのは緩やかで甘美なワルツ。
周囲には仮面をつけた大勢の男女が踊っている。
至近距離で彼女と向き合い、腰に手を添えたBLASTは低く、押し殺した声で囁いた。


「……おい、正気かよテメェ。こんな場所でバレたら、ライブ以上の大騒ぎになるぞ」


「ふふ、大丈夫ですよ。この仮面は、運営でも特定できないように少しだけ手を加えてありますから」


仮面の下で、彼女――エミリアは、いたずらが成功した子供のように微笑んだ。


「それに、今の私はただの招待客の一人です。……あんなに素敵なパスを受け取ってくれた『お礼』まだ直接言えていませんでしたし」


「……お礼だぁ? ……なら、一曲で済ませろ。テメェがこんなところで目立ってっと、俺の心臓が持たねぇわ」


「あら、意外と慎重なんですね。それとも……私と踊るのが、そんなに緊張しますか?」


「……んなわけねぇだろ。……チッ」


BLASTは顔を背けたが、エスコートする手は驚くほど優しく、彼女のステップを確実にリードしていた。
宝石のようなシャンデリアの光が、二人の仮面を煌めかせる。
世界中の誰もが憧れる歌姫を独占し、神々の住む城で踊る。


「……最高のライブだった。……あいつらも、死ぬほど喜んでやがったわ」


「……よかったです。……あなたに、届いて」


音楽がクライマックスに向かう中、彼女はそっとBLASTの肩に頭を寄せた。
仮面越しに重なる視線。
現実の肩書きも、仮想の偽名も、すべてがこの一瞬の調べの中に溶けていく。



ワルツの残響を背に、二人は喧騒から逃れるようにして静かなバルコニーへと滑り出した。
眼下には黄金の雲海が広がり、遠く四つの街から放たれる祝祭の光が、宝石をぶちまけたように輝いている。


「……ダンス、お上手でしたね。少し驚きました」


隣に並んだ彼女――エミリアが、仮面を指先で少し持ち上げ、涼やかな夜風に目を細める。


「……ガキの頃、叩き込まれただけだ。……それより、テメェ……。さっきのライブ、マジで……その、悪くなかったわ」

「『悪くなかった』、ですか?」


「……あぁ。……最高だったっつってんだよ、察しろ」


ぶっきらぼうに視線を逸らすBLASTに、彼女は「ふふっ」と柔らかな笑い声を漏らした。
けれど、その笑みはすぐに少しだけ寂しげなものに変わる。




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