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Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】

第2章 初恋は、0と1の境界線上で


最後の旋律が夜空に溶け、天空城を包んでいた白銀の光がゆっくりと収束していく。
訪れたのは耳が痛くなるほどの静寂と、それに続く割れんばかりの歓声だった。



「……すごかった。言葉が出ないよ……」



緑谷が震える手で目元を拭った。
上鳴が「俺、生きててよかったわ……」と魂が抜けたような顔で空を仰いでいる。


「……フン。まぁ、退屈しねぇステージだったわ」


爆豪はぶっきらぼうに吐き捨てたが、その視線は彼女が消えたステージの残光をいつまでも追いかけていた。




祭典の熱狂はまだ終わらない。
ライブの興奮を冷ますように始まったのは、城の広間を開放しての自由参加イベント――『天空の仮面舞踏会』だった。




「うわぁ、みんなドレスアップしてる! 」



広間には意匠を凝らした仮面をつけた人々が集まり、優雅な音楽に合わせてステップを踏んでいる。
三人もシステムから配られた豪奢な仮面を装着し、会場の隅にあるビュッフェへと陣取った。



「おい、この肉! 現実じゃ絶対食えねぇぜ! 爆豪、お前も食えよ!」


「……っつーか、なんで俺らがこんなキラキラした場所にいなきゃならねぇんだ。柄じゃねぇだろ」



「いいじゃないかっちゃん。今日だけは『ご褒美』だよ。見てよ、あのデザートも宝石みたいに綺麗だ……」




三人は煌びやかなダンスホールを遠巻きに眺めながら、運ばれてくる仮想世界の絶品料理を堪能していた。




「……なぁ、爆豪。さっきのライブ中さ、エミリアちゃん、こっちの方見てなかったか?」



上鳴が肉を頬張りながら、ふと核心を突くようなことを言った。



「あぁ!? んなわけねぇだろ。何万人いんだと思ってやがる」



「でも僕も一瞬思ったよ。……なんだか、かっちゃんを見て、笑ったような気がして」


「……テメェら、酒の回りすぎだわ。いいから黙って食え」



爆豪は不機嫌そうに背を向けたが、仮面の下で熱くなった頬を隠すように、強めのカクテルを喉に流し込んだ。



華やかな音楽と、仮面越しの囁き声。
祭典の夜はまだ更けない。



この幻想的な空間の中で、爆豪は手の中のグラスを見つめながら、ライブの最後に彼女が見せた「あの微笑み」の意味を、一人静かに噛み締めていたーー。



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