Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第2章 初恋は、0と1の境界線上で
四つの広大な世界――海、森、和、夜――そのすべてを従えるようにして世界の中心に鎮座する『クラウド・キャッスル』
普段はシステムの中枢として厳重に守られ、一般のユーザーがその門を潜ることは叶わない。
だが今日、銀色の羽に導かれた爆豪たちは、白亜の巨塔を真っ向から見上げるバルコニーに立っていた。
「……すっげぇ……。なんだよ、これ」
上鳴が喉を鳴らして呆然と呟いた。
足元には、どこまでも続く黄金の雲海。
その上に建つ城は、大理石を削り出したような白さと、神の息吹が宿ったかのような透明な光を放っている。
重力から解き放たれた巨大な回廊が空中に浮遊し、そこを流れる清らかな水が、虹色の滝となって雲の下へと落ちていく。
「……神話の世界だ。プログラムで、ここまで神々しい空間が作れるなんて……」
緑谷はもはや分析することさえ忘れ、ただその美しさに圧倒されていた。
「……フン。デカいツラして浮いてるだけはあるわ」
爆豪は腕を組み、鋭い視線で城の頂上を見据えた。
白亜の壁に反射する光が、彼のアバターを眩しく照らし出す。
この場所の美しさに瞳は深い期待が宿っていた。
その時、世界全体に重厚な鐘の音が響き渡ったーー。
「――っ! 始まる!」
空そのものが巨大なキャンバスとなり、デジタル数字が浮かび上がる。
『60……59……58……』
「おい、見ろよ! 下の四つの国からも光が上がってきてるぞ!」
上鳴が指差す先、地上を支配する四つのエリアから、それぞれのイメージカラーを纏った光の柱が天空城へと伸び、夜空に巨大な魔法陣を描き出していく。
「……あと30秒だ。かっちゃん、くるよ……!」
緑谷が拳を握りしめる。
爆豪は無言で、城の最上階に設置されたクリスタル製のステージを凝視した。
約半年前、初めて彼女の歌を聴いたあの日の衝撃。
二人きりの入り江で過ごした静かな時間。
そのすべてが、このカウントダウンの鼓動に重なっていく。
『10……9……8……』
天空城の空気が、キィィィンと高周波の音を立てて震え始めた。
『3……2……1……』
『00:00』
日付が変わった瞬間、天空の城白銀の光に包まれた。
静寂。
そして、その光の繭を内側から突き破るようにして、世界が待ち望んだ「唯一の音」が解き放たれたーー。