Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第2章 初恋は、0と1の境界線上で
「……ったく、どこのどいつが当たってんだよ。不正操作でもしてんじゃねぇのか」
あれから数日後、いつもの入り江で爆豪は水面を眺めながら吐き捨てた。
「……ふふ。やっぱり、ダメでしたか?」
背後から鈴の鳴るような声がして、BLASTは肩を跳ねさせた。
振り返ると、そこにはいつもの地味なアバターに身を包んだ彼女が少しだけ心配そうな、けれどどこか楽しそうな瞳で立っていた。
「……あぁ!? 落選だよ、落選。上鳴の野郎も言ってたが、あんなもん人間が当たるようにできてねぇだろ」
爆豪が不貞腐れて横を向くと、彼女はそっと隣に腰を下ろした。
「……ごめんなさい。私も、気になっていたんです。あの場所、入れる人数が本当に限られていて……。毎年、倍率が物凄く高いから……でも、BLASTなら『気合で当てる』って言うかなって」
「当たり前だろ! ……だが、気合じゃどうにもならねぇ領域があるってことを思い知らされたわ」
「ふふ、そんなに怒らないで。……実は、あの日以来、私もずっと考えていたんです。もしあなたが来られなかったら、私は誰に向かって歌えばいいんだろうって」
「…………」
エミリアの静かな言葉に、爆豪の毒気が抜かれる。
彼女は水面に映る自分の姿をじっと見つめていた。
「あの場所は、全エリアに中継されるから、どこにいても私の歌は届きます。でも……私にとって、画面越しの数千万人の歓声より、ここで隣に座ってくれるあなたの『楽しみにしてる』っていう言葉の方が、ずっと、ずっと重かったから」
「……あー、クソ。……悪いな。期待させといて、結局広場のデカいモニターで拝むことになりそうだわ」
BLASTが自嘲気味に鼻を鳴らす。
だが、彼女は首を振った。
その瞳には、ライブ前の歌姫としての強い光が宿っている。
「……いいえ。まだ諦めないでください」
「あ?」
「……『ZERO WORLD』の管理システムには、抽選とは別の招待枠があるんです。……私が、私自身の『大切なゲスト』として呼べる権利が」