Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第2章 初恋は、0と1の境界線上で
「――おい、嘘だろ。……『厳正なる抽選の結果 落選』だと? ざけんなクソがッ!!」
祭典の当落発表日。
『ツクヨミ・レルム』の片隅にある居酒屋で、爆豪の怒号が静謐な空気を切り裂いた。
端末に表示された「落選」の二文字を、彼は親の仇かというほどの眼力で睨みつけている。
「あはは……かっちゃん、そんなに怒らないでよ。僕だって落ちたんだから」
隣で緑谷が力なく苦笑いしながら自分の画面を見せる。
そこにも非情な落選通知が踊っていた。
「っていうか、お前このライブの倍率知ってて応募したのかよ?」
上鳴がジョッキを弄びながら呆れたように口を出す。
「ZERO WORLDの全ユーザーの何割が狙ってると思ってんだ? エゲツないなんてもんじゃねぇぞ。数千、数万倍は当たり前。当選した奴は向こう三年の運を使い果たしたって言われるレベルなんだから」
「あぁ!? んなもん、気合いで引き当てるのが筋だろーが!」
「気合いでサーバーは動かないよ……」
緑谷溜息をつきながら摘みを摘んだ。
「一応、当日は各エリアの広場で巨大モニターの生配信があるみたいだけど……やっぱり、あの中枢の『天空の城』で、生(ライブ)の音を感じたかったなぁ」
「……あの中枢(場所)じゃねぇと、意味ねぇんだよ」
爆豪は忌々しげに吐き捨て、背もたれに深く体重を預けた。
頭をよぎるのはあの水の都で「楽しみにしてる」と彼女に告げた自分の言葉だ。
(……届くといいな、だぁ? 届く以前に、現場にすら入れねぇじゃねぇか!カッコつかねぇにも程があるわ……)
「……まぁ、仕方ないよね。配信でも彼女の歌は聴けるんだし。ね、」
緑谷の慰めも今の爆豪耳には届かない。
彼女が「空の真ん中」で歌うその姿を、誰よりも近くで見届けると決めていた。
もし行けなかったら、あの入り江で交わした約束はどうなる。
「……チッ、納得いかねぇ」
爆豪はぐいと酒を煽り、無言で夜の都の空を見上げた。
雲海の遥か上白亜の城で待つ彼女は、今頃どんな想いでライブの準備をしているのだろうか。
自分は落選して、画面越しにしか彼女を見られない。
その事実がとてつもなく悔しかった。