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Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】

第2章 初恋は、0と1の境界線上で


「――おい、今度は空の上かよ」


いつもの入り江でBLASTが端末の通知画面を見て呟くと、隣で水面を眺めていた彼女はゆっくりと顔を上げた。


「……天空の城『クラウド・キャッスル』ですね」


「あぁ。8月8日の0時だ。ZERO WORLDの中枢でやる記念祭とか抜かしてやがるが……テメェ、毎年あんな高いところで歌ってんのか」


まだダイブを始めて日の浅い爆豪にとっては、その「祭典」の規模が今ひとつピンときていなかった。
告知画面には、世界中のユーザーが熱狂するようなカウントダウンが踊っている。


「はい。8月8日は、この世界が産声をあげた日なんです」


彼女はどこか遠くを見るような目で、空の彼方を見上げた。


「年に一度、ZERO WORLDの全エリアからアクセスが集中する最大の祭典。そのクライマックスで歌うのが、ここ数年の私の役割(シゴト)なんです」

「全エリアからだぁ? サーバーが焼き切れんじゃねぇのかよ」

「ふふ、大丈夫ですよ。その日の天空の城は、物理法則すら書き換えられる特別な空間になるんです。……眩しすぎるくらいの光が集まる場所」


エミリアは少しだけ寂しげに、けれど誇らしげに言葉を続けた。


「私が初めてここで歌ったのも、その記念日でした。最初は、誰も私のことなんて知らなくて。でも、あの空の真ん中で歌った瞬間……世界が私の歌で満たされるのを感じたんです」

「…………」


爆豪は黙ってエミリアの横顔を見つめた。
いつもはこの静かな水の都で、消えてしまいそうなほど儚く座っている彼女が、その日は「世界の中枢」で光の象徴になる。


「……高いところは嫌いじゃねぇ」


爆豪は不器用に鼻を鳴らし、エミリアの視線を追うように上空を見た。


「テメェがその『中枢』って場所でどれだけデカいツラして歌うのか、この目で確かめてやるわ」


「……BLAST」


彼女が驚いたように彼を見る。


「……あの場所は、地上のライブとは少しだけ、聴こえ方が違うんです。……あなたに、届くといいな」

「届くに決まってんだろ。誰に言ってやがる」



不敵に笑うBLASTの言葉に、エミリアは胸の奥が熱くなるのを感じた。



世界中の数千万人が聴く歌が『直接』彼にも届くといいなと願わずにはいられなかった。



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