• テキストサイズ

Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】

第1章 ようこそ『ZERO WORLD』へ


広場へ近づくにつれ空気が震え始めた。
それは単なる音圧ではなく、冷たい火花が肌を走るような、魂の輪郭をなぞられるような奇妙な感覚。


「……静かにしろ。始まるぞ」


爆豪が立ち止まった瞬間、街中の明かりがふっと消えた。
 


ーー静寂。


次の瞬間、闇を切り裂くようにして、ステージにプラチナブロンドの髪をなびかせた歌姫――エミリアが舞い降りる。


彼女が声を放った瞬間、緑谷の肩がびくりと跳ねた。



「っ……!」



個性のないこの世界で、その「歌声」だけが唯一の暴力的なまでの輝きを持って、聴く者の胸の奥を抉っていく。
現実の誰とも違う、けれどどこか懐かしく、ひどく孤独で、それでいて強い旋律。




「なんだろう……この歌。悲しいのに、すごく……温かくて……懐かしい……」



緑谷の大きな瞳からぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。
ただの「緑谷出久」という一人の人間が、むき出しにされていく。


「…………」



隣で爆豪は、ステージ上の彼女を黙って見つめていた。
緑谷が泣いていることにも気づかないほど、その視線は熱く、真っ直ぐに彼女の姿を捉えている。

現実の自分を縛るすべての鎖を解き放ち、この虚構の世界でしか呼吸できない自分を、彼女の歌だけが肯定してくれる。


「……見たか、verde。これが、この世界の『本物』だ」


ライブが終わり、光の粒子となって消えゆくエミリアの余韻の中で、爆豪が低く呟いた。


「うん……。BLAST、僕……わかった気がするよ。君がどうして、この世界に、彼女のところに……通い詰めるのか」


緑谷は涙を拭いながら、ステージだった場所を呆然と見つめ続けた。



この美しすぎる世界で、彼女の歌声が現実の何より『魂』に響くから……。


/ 135ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp