Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第1章 ようこそ『ZERO WORLD』へ
ライブの熱狂が冷めやらぬ中央広場から離れ、BLASTとverdeはエターナル・ナイトの街外れへと歩を進めていた。
「……すごかったね、BLAST。まだ心臓のバクつくのが止まらないよ」
緑谷は胸に手を当て、夜空に溶けていく光の粒子を見つめている。
「フン、言っただろ。……おい、次は『アクア・クリスタリア(海の世界)』行くぞ。あそこの水は、現実の汚ぇ海とは比べもんにならねぇくらい澄んでやがる」
「宝石のように澄み渡る都、か……。あ、見てBLAST! 向こうに見える黄金に輝く場所は、『シルヴァ・アルフレイム(エルフの森)』だよね? 遠目からでもその森の美しさがわかるよ!」
「あぁ。あそこは上鳴が好んで行く場所だ。……だが、俺はここの静けさで十分だわ」
二人は幻想的な夜の街を抜け、次のエリアへのワープゲートへ向かった。
夜の国の境界線を越えた瞬間視界は一変した。
頭上に広がるのは空ではなく、たゆたう瑠璃色の海水。
巨大な水の天蓋を、見たこともない色鮮やかな魚たちが優雅に泳ぎ回っている。
「……うわぁ、綺麗だ……。本当に、海の中に閉じ込められたみたいだね」
「フン、見惚れて足踏み外すんじゃねぇぞ。ここは道も全部『水』でできてやがるからな」
爆豪の言葉通り足元には透き通った水の回廊が伸びている。
一歩踏み出すたびに波紋が光の輪となって広がり、足首に心地よい冷たさが伝わってきた。
「……冷たい。本当に水の中にいるみたい……なんだか不思議な気分だよ。現実ではいつだって何かに追われてる。…… でも、ここに来て、あの歌を聴いて……この綺麗な景色を見てると、自分がただのちっぽけな『1人の人間』なんだって、実感するんだ」
「…………」
爆豪は無言で前を歩く。
その背中は現実の爆豪勝己よりもどこか穏やかに見えた。
「……んなこと、わざわざ口に出すんじゃねぇよ。クソナード」
「あはは、そうだね。……連れてきてくれて、ありがとう。BLAST」
水の都の深淵から差し込む光が、二人を青く染め上げる。
現実の喧騒も、ヒーローとしての重圧も、今は届かない。
ただ、寄せては返す水の音だけが二人の静かな時間を満たしていたーー。