Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第1章 ようこそ『ZERO WORLD』へ
「――かっちゃん、なんだか少し、雰囲気が変わった……?」
昼下がりの事務所ビル。
偶然エントランスで鉢合わせたデクの第一声に、俺は無意識に眉間に皺を寄せた。
「あぁ? どこ見て抜かしてんだデク。相変わらずだな、テメェの眼球は」
「いや、怒鳴り方はいつも通りなんだけど……。なんて言うか、トゲの先っぽが少しだけ丸くなったっていうか」
デクは顔を綻ばせ、いつもの癖で顎に手を当てて俺を観察し始める。
相変わらず気色の悪い分析癖だ。
「……前までのかっちゃんは、なんて言うか、二十四時間ずっと導火線に火がついてるみたいだったから。今は、少しだけ……心がどこか別の場所で息を抜けてる感じがするんだ」
「……っ、……ンなわけねぇだろ。俺はいつだってフルスロットルだわ。余計なこと考えてねーで、テメェは自分の心配してろ」
俺はデクの視線を避けるように、足早に歩き出した。
幼馴染だからこそ、こういう微々たる変化を見逃さない。
それが少し苛立たしい。
(……心に暇だぁ? んな余裕、あるわけねぇだろ)
心の内で毒づく。
表には出さねぇが、俺は今、テメェに最高のスーツを叩きつけてやるために、資金繰りから素材の手配まで、プロとしての意地を全部注ぎ込んでる真っ最中なんだよ。
サプライズで度肝を抜いてやるまでは、死んでも悟らせねぇが、ある事が気になってデクに訪ねてみる。
「……おい、デク」
「え、何?かっちゃん」
「……テメェ、『ZERO WORLD』っつーの……知ってんのか」
その言葉に、デクは驚いたように目を丸くした。
「えっ、あ、うん! 知ってるよ。雄英の生徒たちの間でもすごく流行ってるし、教室でもよく話題に上がるんだ。『あっちの世界じゃ個性が使えないから、かえってリラックスできる』とか……。えっ、もしかしてかっちゃん、興味あるの?」
「……まぁ、多少な」
「意外だなぁ! かっちゃんはてっきり、そういう仮想現実とか『まやかしだ』って一蹴するタイプだと思ってたよ」
「……あ? てめぇ、俺をなんだと思ってんだ。……まぁ、一度やってみりゃわかんだろ。クソ忙しいのは知ってるが、たまには脳みそ休めねぇと、テメェのそのデカすぎる頭も焼き切れるぞ」