Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第1章 ようこそ『ZERO WORLD』へ
モニターの隅にライブの録画ログが流れる。
ふと、目が止まった。
最前列に近い場所で、微動だにせず私を凝視していた一人のアバター。
派手なエフェクトで着飾る他の観客とは違う、どこか尖った、けれどひどく渇いたオーラを纏った男。
「……BLAST、さん」
その名前が、なぜか胸の奥に引っかかった。
数え切れないほどの投げ銭や称賛のメッセージをくれるファンは他にもたくさんいる。
けれど、あのアバターが放っていた、魂を直接ぶつけてくるような視線は他の誰とも違っていた。
「……また、来てくれるかな」
作業部屋のピアノに指を這わせる。
現実では「無」でしかない私が、唯一自分を肯定できる場所。
あのBLASTという人が、もし私の正体を知ったら――この、何も持たない「無個性」な女だと知ったら、一体どんな顔をするだろう。
そんな想像をかき消すように、私は次の曲の旋律を紡ぎ始めた。
悲しい過去を埋めるようにーー。