Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第3章 未完の初恋、ログイン不可の心
雨音の響く静かな自室。
は、初めて人を招くという緊張に少しだけ指先を強張らせながら、緑谷を迎え入れた。
中学時代からの数少ない友人であり、今の自分と爆豪を繋いでくれる唯一の理解者。
「ごめんね、急に呼んじゃって……」
「ううん、大丈夫だよ。かっちゃんの相談以来だね。……顔色、少し良くないみたいだけど、何かあった?」
が出したコーヒーを一口飲んでから彼が優しく問いかけると、彼女はようやく胸に溜まっていた小さな違和感を口にした。
「……あのね、実はちょっと相談なんだけど。次のZERO WORLDの周年祭で、運営から初めて『この曲を歌ってほしい』って指定があったの」
「えっ、運営から直接? いつもは自分で作ってるんじゃなかったっけ」
「そうなの。珍しいなと思って。……でもね、その譜面を見てると、なんだか不思議な気持ちになるっていうか。少しだけ、胸がざわざわするの」
軽い世間話のつもりで、は手元のスマートフォンに届いた運営からのメッセージを緑谷に見せた。
そこには譜面データと、丁寧な依頼文が並んでいる。
それを見た瞬間、緑谷の表情がぴくりと動いた。
「……ねえ、これ。現実のスマホに直接届いたの?」
「え? うん、そうだけど。……変かな?」
緑谷は驚いたように目を丸くし、端末を食い入るように見つめた。
「変……というか、すごいね。本来、ZERO WORLDのメッセージ機能って、ダイブ中のバーチャル空間でしかやり取りできないはずだよ。現実のネットワークとは切り離されてるのが売りだったはずだし」
「あ、そっか……。実は私のデバイス、運営から提供された特別なプロトタイプなんだ。歌姫『エミリア』として活動するために、現実でも連絡が取れるようになってるし、アバターの容姿も少しだけ変装用に弄れるようになってて」
「専用デバイスか……。運営も、君のことをすごく特別視してるんだね」
緑谷は少し考え込むような仕草を見せたが、すぐにいつもの穏やかな笑顔に戻った。