Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第3章 未完の初恋、ログイン不可の心
その瞬間、爆豪の手が一度ビクンと跳ねた。
だが、すぐに拒絶ではないことを理解したのか、それまでの控えめな触れ方が嘘のように指が深く、隙間を埋めるように絡められた。
「…………」
「…………」
どちらも言葉を発することはなかった。
顔を見れば、自分の顔がどれほど赤くなっているか、そして彼がどんな表情をしているか、容易に想像がついてしまう。
二人はただ、繋いだ手の熱だけを頼りに、天高く伸びる巨大な笹を見上げていた。
無数の短冊が放つ光の粒が、雨上がりのように二人の視界を優しく満たしていく。
爆豪の短冊に書かれていた「本当のお前に会いたい」という願いが、掌を通して直接心臓に流れ込んでくるようだった。
名も知らぬ自分を、過去さえ知らない今の自分を、彼はこれほどまでに求めてくれている。
指先から伝わる彼の鼓動が心地よくて、はただ、この幻想的な光の海に溺れていたいと願った。
二人の間に流れる時間は、外界の喧騒を忘れるほどに静か
だった。
日付が変わる瞬間、会場を包む空気が一変した。
巨大な笹に括り付けられていた数万の短冊が、再び光る蛍たちの導きによって一斉に解き放たれたのだ。
光の奔流となった短冊は、渦を巻きながら夜空の深淵へと昇っていき、天を貫く巨大な天の川へと吸い込まれていく。
視界のすべてが白銀の光に染まる、圧倒的な幻想。
「……空に還っていくんだね。なんだか、本当に願いが届きそう」
「ケッ、ド派手な演出だな」
爆豪は毒づきながらも、その瞳は空を流れる光の川をじっと追いかけていた。
#NAME1は天の川を見つめながらふと、幼い頃に聞いたお伽話を口にする。
「ねぇ、知ってる? 織姫と彦星は、一年に一度しか会えないけど、そのたびに二人の絆は強くなるんだって。……私たちも……そうだったのかな」
爆豪は一瞬、繋いだ手にぐっと力を込めた。
「……あんな思いは二度と御免だ。俺はあいつらみたいに一年も待てるほど、気のなげぇ男じゃねぇ」
短気な彼らしい答えに、#NAME1は思わず小さく吹き出した。
けれど、その強引な言葉の裏にある情熱が、今は何よりも愛おしい。
「……お前は、何願ったんだ」
不意に、爆豪が空を見上げたまま問いかけてきた。
#NAME1は、自分の短冊に込めた想いを反芻する。