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Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】

第3章 未完の初恋、ログイン不可の心


『エミリアが心から笑えるように。
  一秒でも早く、本当のアイツに会えるように』


「っ……」


心臓が跳ねた。
そこには、ナンバーワンを掲げるトップヒーローの野望など一文字もなかった。
ただ、一人の男としての、剥き出しの祈りだけが記されていた。
今、隣で笑っている偽りの姿ではなく「本当の自分」を彼はまるごと受け入れる覚悟で待っている。


(……爆豪くん。あなたは、まだ私が「誰」かも知らないのに……)


その真っ直ぐすぎる願いが、の胸に鋭く突き刺さる。
爆豪は彼女という存在そのものに、魂の奥底から焦がれているのだ。


「……おい。何いつまでも突っ立ってんだよ」


爆豪が、怪訝そうに隣を覗き込んできた。
自分の願いが見られたとは夢にも思っていないのか、その表情には先ほどまでの安堵感がまだ残っている。


「……ううん、BLASTは、何をお願いしたのかなって」

「あぁ!? そんなもん、人に教えるわけねぇだろ。……叶わなくなるっつーの」


そう言って、爆豪はわざとらしく視線を逸らした。
だが、その耳の先は隠しきれないほど赤くなっている。
は、ぎゅっと浴衣の袖を握りしめた。
彼の願いを知ってしまった今、逃げ続けることがどれほど残酷なことか。


「……私も。BLASTの願い事、叶うといいなって思うよ」


「……当たり前だ。俺が願ったんだから、絶対叶うに決まってんだろ」


自信満々に言い放つその声が、今は少しだけ震えているように聞こえた。
蛍たちが放つ淡い光の下、数千の短冊が夜風に揺れるのを眺めていると、隣にいる爆豪の気配がふと、近付いた。
無言のまま差し出された彼の手が、迷うように空を切った後、そっとの指先に触れる。


「……っ!」


心臓が跳ねた。
かつてはこの仮想空間の中で、互いの魂を確かめ合うような深い口づけを交わした仲だというのに。
今、触れ合った彼の手は、初めて女子の手を握る少年を思わせるほど、微かに震えていた。


(……爆豪くんも、緊張してるんだ)


一ヶ月の空白。
そして、再会してからずっと二人の間にある「壁」
それを今、爆豪は力ずくではなく、慎重に乗り越えようとしていた。


は溢れそうになる愛しさを抑えながら、そっと彼の指を握り返した。



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