Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第3章 未完の初恋、ログイン不可の心
和の国『ツクヨミ・レルム』の七夕会場は、どこを見ても鮮やかな浴衣姿のミラージュで溢れていた。
二人はまず、七夕の名物の一つである、竹の樋が連なる流し素麺のエリアへと向かった。
「ほら、次、来るぞ。逃すなよ」
「あ、取れた! BLAST!見て」
爆豪の言葉通り、竹の中を五色の麺が涼やかに流れてくる。
必死に箸を動かすに対し、爆豪は驚くほど正確な箸捌きで次々と麺を掬い上げ、満足げに喉を鳴らした。
その後は屋台を巡り、七夕限定の銀河ソーダと、琥珀糖を散りばめた星空ゼリーを堪能した。
「……こういうの、本当に久しぶり。ステージの活動してると、イベントの日、どうしてもこういう場所には来られなかったから」
「ケッ、たまには骨休めも必要だろ。……悪くねぇ味だわ」
爆豪はぶっきらぼうに言いながらも、溶けかけのゼリーを器用に口に運ぶ。
その穏やかな時間に、は胸の奥が温かくなるのを感じていた。
やがて、会場の明かりがふっと落ち、アナウンスが流れた。
一斉に願いを天へ届ける時間が来たのだ。
「……書けたか」
「……うん」
爆豪の声に促され、は手元の短冊を握りしめた。
二人がそれぞれの想いを綴った短冊を、近くを舞う光る蛍に預ける。すると、無数の蛍たちが一斉に光を強め、淡い軌跡を描きながら巨大な笹の木へと舞い上がった。
暗闇の中、数千の蛍が星屑のように空を埋め尽くす、幻想的な光景。
蛍たちは丁寧に、枝の先々へ短冊を括り付けていく。
「……わぁ、すごい……」
感嘆の声を漏らし、視線で自分の短冊を追っていただったが、ふと、隣で放たれた爆豪の短冊を運ぶ蛍が、彼女の目の前を横切った。
その瞬間、淡い光に照らされた短冊の文字が、嫌でも視界に飛び込んできた。