Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第3章 未完の初恋、ログイン不可の心
退院の翌日。
爆豪は喫茶店の暖簾を潜った。
待ち構えていた緑谷が、彼の姿を見るなりパッと表情を明るくする。
「かっちゃん! 退院おめでとう。……本当に一ヶ月で出てくるなんて、病院の先生も腰を抜かしたんじゃない?」
「うっせぇ。あんな狭苦しい所に一日だっていられるかよ」
爆豪は乱暴に椅子を引いて座ると、注文もそこそこに本題を切り出した。
「……昨日、ログインして会ってきたわ。あいつに」
「えっ!? 退院前夜に早速!? ……相変わらずの行動力だね、かっちゃんは……」
驚きを隠せない緑谷を余所に、爆豪は眉間に皺を寄せたまま腕を組んだ。
「……一応、次の約束もつけてきた。だがよ、デク。……あいつ、やっぱり何か隠してやがる」
「……隠し事?」
緑谷の鼓動が、一瞬だけ早くなる。
爆豪は、入り江での彼女の奇妙な拒絶感、そして「有名なヒーローに驚いて逃げた」という釈明について、吐き捨てるように語った。
「ヒーローがどうとか、そんなんであそこまで頑なになるかよ。……テメェ、リアルであいつに会ったんだろ? あいつ、本当はどんな奴なんだ。何を怖がってやがる」
鋭い射抜くような視線。
緑谷は一瞬、喉元まで出かかった真実を飲み込んだ。
中学時代の、震えていた彼女の背中。
そして今の、光り輝く歌姫としての孤独。
「……ごめん、かっちゃん。それは僕の口からは言えないよ。約束したんだ、彼女と」
「あぁ!? テメェ、俺よりあいつを優先すんのかよ!」
「そうじゃないよ。……ただ、彼女には彼女の理由があるんだ。彼女が、自分自身の足で君の前に立ちたいって思うまで、待ってあげてほしいんだよ」