Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第3章 未完の初恋、ログイン不可の心
『今の爆豪勝己を見てほしい』
(……見極めなきゃ。今のこの人が、本当に私の知っている「あの人」とは違うのか……)
葛藤の末、彼女はゆっくりと顔を上げ、爆豪の瞳を真っ直ぐに見つめ返した。
「……うん。ここ(ZERO WORLD)でなら、いいよ。……私も、あなたともっと話してみたいって、思ってるから」
「……っ、そっかよ。……ああ、わかった。……助かるわ」
完全な拒絶ではなかった。
その事実に、爆豪は目に見えて安堵の息を漏らした。
強張っていた肩の力が抜け、不器用な笑みが口元に浮かぶ。
「……あ。……いや、別に助かるとかじゃねぇけどよ。」
いつもの乱暴な口調だけど、そこには確かな親愛の情が混じっている。
は、その温もりに戸惑いながらも、少しだけ心を許しかけている自分に気づいていた。
(……この人は、今の私を大切にしてくれている。……でも、もし私が、あの日の『無個性』の私だって分かっても……その目は変わらないでいてくれるかな…)
「……どうした、急に黙り込んでよ」
「……ううん、なんでもない。……夜風が、少し冷たくなってきたね」
爆豪は、アバター越しには感じることのできない「温度」を惜しむように、彼女の隣に一歩歩み寄った。
「……じゃあ、今日はもう落ちるか。……あんま夜更かしして体に障るのもな…」
「……そうだね……BLASTも、明日退院なんだから、しっかり休んでね」
「おう。……またな、……エミリア」
「……うん、またね」
光の粒子となって消えていく二人の姿。
ログアウトした後の静かな病室で、爆豪は天井を見上げ、一ヶ月ぶりに得た「希望」を噛み締めていた。
一方、自室でデバイスを外したもまた、窓の外の月を見つめ、自分の中の二律背反な感情と向き合い続けていたーー。