Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第3章 未完の初恋、ログイン不可の心
静寂が戻った部屋で、ログアウトしたはデバイスを置いた。
ほどなくして、緑谷から一通のメッセージが届く。
『向き合ってくれて、本当にありがとう。僕にできることがあれば、いつでも相談に乗るからね』
その言葉に背中を押されるように、彼女は勇気を出して返信した。
リハビリ中の爆豪のこと。
そして、自分の知らない「彼」の空白を埋めるために。
数日後、ヒーロー活動を再開し多忙を極める緑谷が、周囲の目を考慮して予約してくれたのは、都内の静かな和食店の個室だった。
「……久しぶりだね、こうして面と向かって話すのは」
緑谷は、かつての面影を残したままの優しい笑顔でお茶を啜った。
目の前に座る彼女は、『ZERO WORLD』での歌姫の時と違い控えめな私服に身を包んでいる。
「緑谷くん。……私に、教えてほしいの。あの日、私たちがバラバラになってから……勝己くんが、どんな道を歩んできたのか」
の切実な瞳に、緑谷は少しだけ表情を引き締めて頷いた。
「……そうだね。あの中学を出てから、かっちゃんは雄英高校に入って、文字通り『最強』を目指してた。でも、そこで何度も壁にぶつかったんだ。自分より強い奴、自分にはないものを持ってる奴……。彼にとって、それは屈辱の連続だったと思う」
「あの爆豪くんが……挫折を?」
「うん。特に、ヴィラン連合に誘拐されたり、オールマイトの引退に責任を感じたりして……。かっちゃん、一時期は本当にボロボロだったよ。でも、そこからなんだと思う。『自分の弱さ』を認め始めたのは」
緑谷は、懐かしむように遠い目をした。
「八年前、かっちゃんは心臓を撃ち抜かれて一度は死にかけた。……それでも、僕を助けるために、ボロボロの身体で立ち上がったんだ。その時に言ったんだよ。……今までごめん、って」
「……彼が謝ったって、今でも信じられない……」
「信じられないよね。でも、かっちゃんは本気だった。それからはただ強いだけのヒーローじゃなくなった。……傷ついた人の痛みがわかる、不器用だけど真っ直ぐな男になったんだ。……今の爆豪勝己は、君が知ってる昔の彼じゃないよ」