Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第3章 未完の初恋、ログイン不可の心
爆豪からの「会いたい」という切実な願いが、の胸を鋭く刺した。
震える指先で彼女は返信を打った。
『……ごめんなさい。今すぐには会えないの』
送信ボタンを押す。
その直後、爆豪から食い気味にメッセージが跳ね返ってきた。
『……何があった。テメェ、どっか体でも悪ぃのか。……それとも、誰かに何か言われたか』
どこまでも真っ直ぐに、自分を案じる言葉。
かつては自分たちを顧みることすらなかった彼が、今は画面の向こうで、顔も見えない相手の安否に必死になっている。
その変化が、を余計に苦しくさせた。
(……爆豪くん。あなたは、私が誰かを知ったら、きっと自分を許せなくなる……)
彼女は涙を拭い、逃げ出したい心を引き止めて、最後の約束を綴った。
『私は大丈夫。……だから、お願い。今は療養に専念して。……あなたが元気になって、ちゃんと歩けるようになったら。……その時は、必ず会いに行くから』
その言葉が画面に表示された瞬間、入り江に立つ爆豪が目に見えて肩を落とした。
期待と、焦燥。
けれど、最後に残ったのは彼女が提示した「未来」への細い糸だった。
「……チッ。……わかったよ、クソが」
爆豪は毒づきながらも、どこか憑き物が落ちたような、穏やかな顔で空を仰いだ。
「……治してやるよ。最速で、完治させてやる……。待ってろ、エミリア」
自分を取り戻したようなその力強い呟きに、岩陰で見守っていた緑谷は、安堵の溜息を漏らした。
今の爆豪の精神状態で無理に再会させれば、真実を知った時の反動で二人の絆は粉々に砕け散っていただろう。
(それでいいんだ。……今は、お互いに「時間」が必要なんだよ)
緑谷はそっと爆豪の背後に歩み寄り、その肩を叩いた。
「……かっちゃん、約束だよ。まずは、ちゃんと寝て、傷を治すこと。……いいよね?」
「……うっせぇ。わかってんだよ、デク」
素直ではない物言いだったが、爆豪はそのまま静かにメニュー画面を呼び出した。
再会という明確な「目標」を得た彼の瞳には、数時間前とは違い光が宿っていた。
二人のアバターが光の粒子となって消えていく。
誰もいなくなった入り江には、ただオレンジ色のガーベラを思わせる夕陽が、静かに波間を照らしていたーー。