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幻想遊園地

第5章 未来視


目的がないのは本当だった。考えが行き詰まってしまい、ちょっとした気分転換のつもりで来ただけだからである。実際に少し歩いたり、『外』の景色を見たせいか、なんとなく頭の中でぐるぐると回っていた思考が落ち着いた気もする。

博士が特に用事を持たないと分かって、シショは手元の何かに目を落とし始めた。基本的にここの業務は多忙というわけではないので、その様子自体は目を引くものではなかった。
しかし、博士はシショが目を落としているモノに興味を惹かれる。

「『本』を・・・見て・・・いや、読んでるのかね?」
「はい。私はこれが好きなのです」

シショは手元にもっている『本』を少し持ち上げて見せ笑い、そして、また『本』に目を落とした。『紙』をめくる指先の動きになにか不思議な懐かしさを覚える。

珍しいものを見たな・・・。

かなり前にシショと話をした時、下代以前の”図書館”では、印字された紙を束ねた『本』と呼ばれる情報ツールが利用されており、それが棚に整然と置かれていたと言っていた。この”図書館”にも『本』は存在しているけれども、当然貴重な文化財であることから、自由に手に取ることができるエリアに置かれていることはなく、閲覧するためにはシショに利用申請をする必要があった。

「ところで」
博士は珍しいものを見たついでに、ちょっと気まぐれを起こした。特に専門家ではない、このシショに目下の自身の研究上の行き詰まりについて話してみようと思ったのだ。

「はい?」
シショが顔を上げた。

「君が・・・絵を描くとする」
「はい」
「ドームでも、人でも、ヴィークルでもなんでもいい。描いたとして・・・その背景を何色にしたいと思うかね?」
シショは少し右斜め上に目を動かして考える素振りを見せたが、ほぼ即座に答えた。
「カエラゥスですね」

ほう、と博士は思った。

通常、成長するにつれて、背景にカエラゥスを選ぶ人間は減っていき、成人する頃には発生率は0.02%以下と言われている。その低確率に自分は出会ったらしい。

「何故かな?」

思いがけず成人サンプルを手に入れた博士は、興味を惹かれて聞いてみた。
ふふ、とシショが笑う。

「おや、そんなこと。理由は簡単ですわ」
「簡単?」
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