第5章 未来視
☆☆☆
【青色の記憶】
カシャン
博士は画像を次に送った。
目の前のスクリーンには、子供が描いたものなのだろう、お世辞にも上手とは言えない絵が映し出された。
描かれているのは、人間、そして、ドーム・・・それからいくつかの建造物だったが、奇妙なことに背景が【リヴィダス】で塗られていた。
症例30A−28、とナンバリングしてあるそれを見て、博士はまたひとつ唸り声を上げた。
少し考えると、手元のコンソールに指を踊らせ、データの入力をする。そして、また次。
症例85G–49
先程の絵よりはやや上手みたいだ。描かれているのは1300年ほど前の下古代の市街地の様子。おそらく何らかの資料から読み取り、そこにイマジネーションを加えて描いたのだろうものだ。
特殊合成樹脂の高層建築
旧型の磁気式浮上バス
そしてやはり、その背景・・・こちらは【ウィオラス】一色だ。
その絵をしげしげと眺め、また博士はデータを打ち込んでいた。
こんな具合に、博士は絵を見ては、データを打ち込む、その作業を繰り返していた。博士が見ている絵のモチーフはまちまちだし、筆致や練度にも共通点はほとんどなかった。
ただ、ひとつ見逃せない共通点があった。
それは背景だ。すべての絵が【ウィオラス】【キィアネス】【ウェネトゥス】など、いわゆる【カエラゥス】系統の色で背景が塗られているのだ。
「先生、何か分かりましたか?」
背後の自動扉がスライドし、助手の女性が飲み物を持って入ってきた。先程までの作業で疲れたのか、博士は椅子にどっかりと腰を下ろし、目の辺りを指でもんでいた。
考え事をしているのだろうな・・・
特に返事がなかったので、そう思った助手は邪魔をしないようにさっさと退散しようと、飲み物を傍らのデスクに置いて、出ていこうとした。その時、突然、博士が口を開いた。
「522人だ」
「はい?」
「738人の子どもに自由に絵を描かせた。内、522人の子が、その背景に【カエラゥス】、またはそれに類する色を使っている。実に70.7%だ・・・。君はどう思うかね」
助手の子は、くいと小首を傾げると、少し間延びした感じで言った。
「さあ・・・わかりません」