第1章 シンデレラ ―The Real Story―
くるくると踊りながら、娘は王子を見上げて言った
「王子様は国の為を思い、するべきことをしたほうがいいと思いますわ」
「王子様は、本当はとてもお優しい方
誠実で、深く人を愛せる方なのですね」
その時、ちょうど、真夜中を告げる鐘が鳴り響きました
その音に娘はハッとして、
自分がとても身分違いなお方に
無礼なことを言っていることに恥じ入りました
恥ずかしさのあまり王子の手を振り払い、
顔を真赤にして広間から走り去ってしまいました
王子がはと気がつくと、
すでに、娘は王宮の石造りの階段を駆け下りているところだったのです
王子は供の者にも声をかけ、娘を追いかけました
娘は階段を駆け下りているとき、つまづきました
「あ!」
あの魔法使いに借りた
硝子でできているかのように美しい靴を
片方落としてしまいましたが、
すぐ上に王子が追いかけてきたのをみて、
そのまま馬車に乗り込み逃げ帰ってしまったのです
馬車はまた、矢のように真夜中の街を駆け抜けました
そして、家に着くと、さきほどの魔法使いはそのままそこにいたのです
「おや・・・まだ舞踏会は終わっていないはずなのに・・・
王子とは踊れたのかね?」
娘はドレスを返すと微笑んで言いました
「私にはもったいないほどの夢のような時間でした
ありがとうございます
このことは一生忘れません」
それと・・・
娘はバツが悪そうに続けました
「お借りしたこの美しい靴の片方を
王宮に落としてきてしまいました
申し訳ありません」
そうして、おずおずと片方の靴を差し出すのです
「よいて、よいて
靴も着物も、お主にやっても良いくらいじゃが、
おそらく、それはお主も困るだろう」
「あの・・・」
娘は意を決してもう一度聞いてみた
「あの・・・どうして、私に、こんなに良くしてくださったのですか?
本当に、本当に感謝しております
絶対に王宮になんて行かれないと思っておりましたのに」
戸惑う娘に、王妃はふふふと笑って言いました
「なあに、お主はいつか、私が卵を買いに来たとき
他の誰も分けてくれなんだのに、自分の分をくれたじゃろう
そのときの恩じゃ」