第1章 京都にて
「悟様、お帰りなさいませ」
玄関の土間から、着物姿で出てきたのは妻である。
当主がいないからと、別に楽な格好をするわけでもなく、キチンとした服装で髪の毛も後で夜会巻をしている。
急に帰ってきた五条に嫌な顔ひとつせず出迎えたは、五条の前に立ち微笑み頭を下げた。
「急にごめんね。」
「いえ、悟様のご実家ですよ?お気になさらず。何かご入用ですか?」
「いや…ちょっと寄っただけ。」
左様でございますか、と微笑むは玄関へと歩く五条の右後ろをついて歩いた。
「お母様たちはただいま用事で出ております。」
「そうなんだ。」
廊下を進む2人。
は、最近の五条家のことを簡単に話していった。
五条は「そう。」とか、「ふーん。」くらいで聞いているのか聞いていないのか、一応は軽く返事をしていた。
「茶菓子を用意させました。」
和室に入り、座敷机の前に五条が座ると、は襖の前に正座をした。
そしてそう言うと使用人がすぐにお茶とお茶請けを持って部屋に入ってきた。
「準備いいね。」
まだ座ったばかりだというのに。
「はい、山口が実家のものが買ってきてくれたのです。萩の月です。悟様こういうのお好きでしょう?」
黄色いふんわりとしたお菓子とお茶が五条の前に出された。
「うん、好き好き。は食べないの?」
「先程いただきました。」
「あ、これのだった?」
「いいえ、たくさん買ってきてもらったので。」
自然と話せてる。
五条はすこしほっとした。
堅苦しさはやはりまだあるが、そんなに気まずい感じでもない。
ただ、自分1人食べてるのを横で正座で見られるのはあまり気持ちいいものでもなかった。