第4章 肆
彼女の必要性を認めた直哉は普段通りの「禪院直哉」を取り戻した。
「茶、冷めてるやないか。作り直せ」
縁側で膝を崩して座ったまま、直哉は投げやりに茶碗をの方へ押しやる。
視線は彼女をただ上から見下ろすだけ。
そこに羞恥の欠片も、昨夜の情けない顔の記憶も、微塵も感じさせない。
「早よぉ」
「わかりました」
世話役であるを、人間としてではなく「道具」として扱う態度も変わりはない。
夜の廊下で見せたあの震える姿、
袴に染みを作って声を上げた記憶は、
直哉の中で完全に封印されたかのようだった。
が茶を淹れ直して差し出すと、
直哉は一口飲んでから、
「まぁまぁやな」
とだけ言い、
それ以上は何も言わない。
褒めてもいない。
ただ、当然のように受け取るだけ。
視線が一瞬だけ絡むとき、
そこに浮かぶのは、
月夜の下で見た情けない表情ではなく、
「所詮お前は俺の下や」という、静かで絶対的な確信だけだった。
――少なくとも、昼の光の下では。