第5章 不倫捜査の同行ヒーローが恋人だった件 爆豪/轟/???
『シャワー、先入る?』
『んー……、あとでいい。朝までたっぷり、時間はあるだろ?』
『やだぁ。でも、奥さんは本当に大丈夫なの?』
『今は完全に眠ってるだろな。明日の昼までは目覚めねぇんじゃね?』
『自分の奥さんにも個性かけちゃうなんて、酷い人…』
『今からお前にもかけてやるよ。理性もぶっ飛んだやつ、したいんだろ?』
『そう…。ねぇ、……早く、しよ?』
聞きたくもない会話が鮮明に耳へ届いて、気分が悪くなる。相手の男は個性を使い始めているのか、女性側の熱が上がり始める。境界をなくしているせいで、私の背中にもじんわりと汗が滲んでいく。
「……大丈夫か」
先生の声に一瞬、意識がクリアになった。気をつけているつもりでも無意識に潜ってしまう癖は相変わらずだ。
「今、会話での証拠を押さえました…。後、少し…」
まだ求められている証拠は掴めていない。自分の余力と焦りが冷静さを奪っていく。
「無理に深く入り込むな」
「……分かってます」
「お前、集中すると境界が曖昧になる」
先生の手が肩に触れた。先生からは一切甘い空気がしなくて、緊張感と周囲を警戒する気配だけが静かに張り詰めている。
「引き返せなくなる前に、俺が止める」
その言葉にさらに奥へと意識が向かう。ぼやけていた視界がクリアになって、見えた映像は男女がベッドで重なり合っていた。求めていた映像を夢中で記録しているうちに、頭の奥から何かが溶け出すような熱に心臓がどくどくと脈打ち始める。次の瞬間、意識がふわっと飛びそうな感覚が襲った。
「そこまでだ…」
低く触れた声と同時に、肩を掴まれた。ぐいっと強く引かれる感覚に曖昧になっていた境界が無理やり剥がされる。その瞬間、強く胸が締め付けられて息苦しい。
「っ、は……」
息を吸い込むと、大きく視界が揺れる。そのまま倒れかけた身体を先生が支えてくれていた。
「大丈夫か…?」
耳元に先生の落ち着いた声が響く。
「吸って、吐け。ゆっくりでいい」
返事をしたくても思うように声も出せない。先生の手が背中を一定のリズムで撫でて、その感覚に合わせるように必死に呼吸を整えていた。