第5章 不倫捜査の同行ヒーローが恋人だった件 爆豪/轟/???
ターゲットに気づかれないよう焦凍とは恋人のふりをして、すかさず部屋番号をチェックした。左右どちらの部屋でもいい、隣の部屋さえ抑えることができればこちらの勝ちだ。ターゲットの指先に集中し、番号を確認した後、空室の部屋を探す。ちょうど右隣の部屋に空室があって、小さくガッツポーズを決める。
「なぁ、凪。これ、どうやって操作するんだ?」
「え、待って待って。そこは私は選ぶから!」
「そうなのか?」
「うん。部屋選び、超大事だから」
「分かった。任せる。……部屋によって雰囲気が違うんだな」
「私もよく知らないけど、とにかくここの部屋ね」
ターゲットは205号室、私たちは206号室。角部屋だし、他の影響も受けにくい、最高のポジションだ。
「じゃあ行くよ」
焦凍の腕をとり、体を寄せる。プライベートでも恋人ではあるけど、ここはいつもより〝らしく〟しておかないと怪しまれてしまう。焦凍は驚きつつも、私に合わせるように腰に手を回した。
そして、部屋に入った瞬間、ふわりと甘い香りが鼻を掠めた。ピンク色の間接照明。無駄に大きなベッド。レースの天蓋。ガラス張りの浴室。ターゲットの隣の部屋を狙うことを優先した結果、明らかに普通じゃない内装に頭が痛くなった。
「…こんな感じの部屋か」
いつも通り女子ヒーローのメンツなら、〝可愛い〟なんてテンションも上がって楽しんでたと思う。でも、今日はこのメルヘンな雰囲気に焦凍と二人…。肝心の焦凍は室内を見回し、置いてある小物を手にとっている。
「……すげぇな。ホテルって、こんな感じなんだな」
感心したように壁を見上げる横顔はどこか楽しそうだ。
「……ベッドも一つなんだな」
「え……?」
想定外の言葉に心臓が跳ねる。確かに焦凍とラブホテルなんかに来たことないけど、さすがに知らないってことはないだろう。