第5章 不倫捜査の同行ヒーローが恋人だった件 爆豪/轟/???
◎ 轟焦凍
待ち合わせ場所は駅前だった。先の情報では、ターゲットである不倫カップルは今夜20時に駅の裏口で待ち合わせをしているらしい。現在の時刻は19時40分。まだターゲットらしきカップルは現れていない。ベンチに腰掛け、コンビニのコーヒーを飲みながらスマホへ視線を向ける。そのまま意識だけを周囲へ広げた。
「悪い。待たせた」
不意に低い声が肩にかかる。でもターゲットはどこにいるかも分からない。なるべく会話を聞かれないよう小さく返した。
「ううん、まだ来てないみたい」
「そうか」
隣に腰掛ける気配がやけに大きい気がした。女性ヒーローの同行のはずなのに隣から伝わる空気は明らかに男のもので、不審に思って視線を向けた瞬間、思考が止まる。
「……しょ」
危うく名前を呼びそうになって慌てて口を噤む。そこにいたのは、この仕事を知らないはずの恋人だった。
「……なんで?」
「凪の事務所からの緊急の依頼だった。所長からの伝言も預かってる」
「伝言?」
「今日はバトルフィストが同行予定だったらしいけど、前の事件が長引いていて来れなくなったみたいだ。所長からは恋人の俺にしか頼めないと急遽依頼が来たんだ」
「待って待って。この仕事の同行は女性ヒーロー限定にしてるんだよ?彼氏とはいえ場所も場所だし…」
「そうなのか?俺じゃまずかったのか?」