第5章 不倫捜査の同行ヒーローが恋人だった件 爆豪/轟/???
「……は?」
「口が苦いままなの、嫌なんだもん」
数秒の沈黙のあと、盛大なため息が部屋に響いた。
「ンで俺が……」
ぶつぶつと文句を垂れながらも、テーブルの上のタブレットを手に取った。指先で荒く画面を叩きながらクリームソーダのページが開かれる。不機嫌そうな表情ででスクロールしていく横顔にも泣きそうになりながらも、クリームソーダへの淡い期待にグッと涙を堪えた。
そして10分後、真っ赤なさくらんぼがのったクリームソーダが届いた。
「これで満足かよ…」
「うん。ありがとう」
さっきまでの悲しかった感情が嘘みたいに晴れる。一口スプーンで掬って、口に運べば甘さが広がる。冷たくて甘いアイスの食感と弾ける炭酸に身体中が満たされていく、そんな感じだ。
「勝己も食べて?」
「…いらねぇ」
「え……?」
勝己の否定的な反応にせっかく浮上しかけていた感情がしゅんと萎む。
「……わかった。食う。…マジで頼むから、泣きそうな顔すんな」
そう言って勝己は諦めたようにため息をついた。スプーンでアイスを掬い、〝はい、あーん〟とスプーンを差し出す。じろっと睨まれたかと思うと、手首を掴まれる。
「……貸せ」
驚いて顔を上げると勝己は私の手ごとスプーンを引き寄せてそのまま口へと運んだ。ゆっくりと味わっている様子もなく、ごくっと喉を鳴らす。
「……これで十分だろ?」
「……うん」
「俺もシャワー行ってくる。その間に食ってろ…」
そう言い残すと、勝己はさっさと浴室へ向かってしまった。一人取り残されたベッドは広くて冷たい。ただ一緒にクリームソーダを食べたかっただけなのに。それだけのことなのに、胸の奥が苦しくなっていく。