第5章 不倫捜査の同行ヒーローが恋人だった件 爆豪/轟/???
「……それはちょっと、やかも」
「断れンのか?」
「え…?」
「例え仕事でも、相手がヒーローでも、男とラブホ行って、無事に済む保証もねぇだろ。……少しは自分のリスクも考えろ」
勝己にしては珍しく、怒鳴るでも威圧するでもない落ち着いた声だった。苛立ちだけじゃない言葉に思わず息を呑む。
「……ごめん」
いつもは売り言葉に買い言葉で、言い合いになるけど、返すことのできない正論には頷くしかなかった。
「テメェんとこの所長にも是正しろっつっとく」
「うん」
二人の間に静かな沈黙。予定していた仕事は報酬も高かったけど、こうなった以上、手放す他ない。落胆の色だけが濃くなる。
「じゃあ…、今日はもう帰る、よね?」
「仕事だろ?」
「……え?」
「俺も請け負ったからには付き合ってやる」
そう言い切る声に有無を言わせる余地はなかった。
「いくぞ…」
そう言って背を向けかけたかと思えば、次の瞬間、ぐいっと強く腕を引かれる。
「わっ」
体勢を崩しかけた身体をそのまま引き寄せられた。気づけばすぐ上に見慣れた黒い服の胸元がある。鼻先を掠める匂いは、いつもの勝己の匂い。
「勝己……?」
「俺ら、仕事でも恋人って設定なんだろ?」
言われてみれば確かにその通りだ。警戒されないためにも、カップルを装ってホテルに入る方がいい。でも…。
「それにしたって近くない?」
「離れた方が不自然だろが…。どうせやんなら完璧に遂行すんぞ」
不機嫌そうに吐き捨てながらも体を抱く腕の力は優しい。静かに頷いて体を預けるように寄りかかった。
そして勝己に抱き寄せられたまま、ネオンの灯るホテル街へ足を踏み入れた。