第5章 不倫捜査の同行ヒーローが恋人だった件 爆豪/轟/???
「…わーっとるわ」
返ってきたのは意外な返事だった。勝己は呆れたようにため息をついたあと、短く舌打ちをする。
「さっき、テメェンとこの所長から依頼がきたんだよ」
「…依頼?」
「不倫調査の同行をしてくれって」
「なんで、勝己に…?」
「今日、来る予定だったヒーローが来れなくなったってよ…」
「だからってなんで勝己が」
そのときだった。スマホに事務所の所長から連絡が入る。慌てて画面を開くも所長からの連絡は、仕事とは思えないほどの軽い内容だった。
〝もう遅いかもしれないけど、今日はバトルフィストの代わりに大・爆・殺・神ダイナマイトに同行をお願いしたから。もし、別の男のヒーローを指名しちゃうと私がダイナマイトに殺されちゃうからねー!ま、やることさえちゃんとやってくれたら、後は適当に楽しんで☆〟
「嘘でしょ…」
いくらなんでもこんな状況はあり得ない。だって、プライベートでは恋人なわけで…、しかも今から向かうところは普通のホテルではない。
「ンで?……俺を騙すとはいい度胸だな」
口角がわずかに吊り上がる。笑っているはずなのに目はまったく笑っていない、その表情に背筋がすっと寒くなる。
「別に…、騙したわけじゃない」
「人探し…なンだろ?」
「だって、例え同行するヒーローが女の子でも、こんな場所に来るなんて許してくれないかなって」
「当たり前だ。ろくに戦闘能力もねぇテメェがこんなことウロつくなんざ、気が気じゃねぇだろが…」
「だって、同行するの女の子だったし」
「……は?」
「前なんて仕事終わったあと恋バナしてたし。危ないこともなかったし」
言いながら勝己の顔がどんどん険しくなっていく。
「あ?」
しまった。そう思った時にはもう遅かった。
「テメェ、自分が何言ってるか分かってンのか」
そう言った瞬間、空気が一瞬だけ静まって勝己は呆れたように深く息を吐いた。
「だったら所長の判断、今回は正解だったな」
「え?」
「どこまで呑気なんだよテメェは…。仮に俺以外の男のヒーローだったらどうしてた?」
今回は完全なイレギュラーだったし、そんなことは考えたこともなかった。でも、もし、勝己以外のヒーローだったら…。同行をお願いできるんだろうか、私は…。