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美オヤジを誘って囲われて救われる話

第26章 生活編


「よし、ここに大事にしまっておこう。なくしたら危ないし、お守りだね」

あなたはヴィクトルから渡された品を、マンションの一室の机の中に入れていた。

互いの緊急時に使うことはあるかもしれないが、ここに居てくれるだけで、彼の気持ちがずっと寄り添ってくれているようで、ふんわり温かな気分になる。

そして今日は、いったん自宅アパートに帰る日だった。
六月の半ばだが、雨が続き気温が下がったのだ。

「気をつけてね、名無しちゃん」
「うん、ありがとうねヴィクトル。お世話になりました」
「…………」
「冗談だよ! ごめんごめん。私、すぐ帰るから」

にこっと告げると、玄関先で彼は表情を最大に喜ばせ、あなたを上から抱きしめる。

「今帰るって言ったね? てことはもうここは君の家ってことでいいのかな」
「うん……そう感じる。ヴィクトルがいるところなら、もうどこでもいいや」

そう話したあなたの表情は、晴れやかだ。
目の前の彼の、感動して幸せそうな姿を見れば、心の底から正しい気持ちだとも思った。

これまで悩んでいた色々なことが、実際に彼と過ごした数週間で薄まっていった。

今ではもう、どうして違うところに一度戻るのだろうと考えてしまうほどである。

その日あなたは彼とぎゅっとハグをして口づけも交わし、笑顔で彼のマンションを後にした。





アパートメントは秋まで契約をしているが、あと数か月の間は、荷物の整理や引っ越しの準備などをしながら過ごすだろう。

ここは人気の物件で、空きが出ればすぐに埋まるという話だったので、あらかじめ大家と話を進めており、問題はなかった。

「家具も備えつけだし、私一人だもんね……ああ、ほんとにもうすぐ二人の生活、始まるんだなぁ……」

がらんとした1LDKに帰ってきて、なんだかぽつんとした気分で部屋を見渡す。

不思議なものだ。
一か月前は、ここで必死に暑さに耐えて、彼の温もりを欲してマンションへ駆け込んだ。

でも今は、なんだかここがもう自分の家じゃなく、仮住まいみたいな感覚がする。

「ふふ」

あなたはソファにだらりと座って、一人で思い出し笑いをした。
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