第26章 生活編
「だから、ヴィクトルをそんな気持ちにさせたくなくて。全部、任せたら大変だから。だから私も何か役に立ちたいって――」
「ならないよ!」
彼はあなたの両肩をもって、視線をがっちりと合わせる。
「相手が君なんだよ? 俺は絶対にそんな風に思ったりしない、君はそいつとは違う、相手のことをいつもこうやってまっすぐ真剣に思いやってくれる優しい人なんだ! だから俺も、俺のほうこそ君の役に立ちたいんだよ、名無しちゃん!」
あなたは彼の勢いにびっくりして見上げている。
「君は自分じゃあまり気づいてないぐらい、俺を支えてくれてるよ。料理だけじゃない、すぐに変化に気づいてくれて、声かけてくれて、愛情をいつもくれるでしょう? どれだけ俺が嬉しい気持ちかわかる?」
彼は今、一番一生懸命だった。
言わずにはいられなかった。目をうるませて自分を映してくれる大切なあなたに。
「ヴィクトル⋯⋯そんなの当たり前だよ。だって好きなんだもん⋯⋯」
「知ってるよ。俺も君が大好きだよ。⋯⋯だから俺も二人の生活を、自分ができるやり方で支えたいんだ。君さえよければ、だけど」
言い切った彼は、まだ鼓動がどくどくと鳴っていたが、次第に表情から力が抜けていく。
せつなさが残る愛情のこもった眼差しで、あなたの髪をそっと優しく梳いた。
頬に触れそうになって、あなたはその温もりを感じたまま、迷わず彼の胸の中に飛び込んだ。
ヴィクトルもきつく抱きしめて、頭ごと抱える。
「うう⋯⋯ありがとう、ヴィクトル。そう言ってくれて⋯⋯」
「ううん、俺もありがとう、話してくれて」
二人の気持ちは再び繋ぎ合わさっていく。
胸には安心が宿るけれど、彼にはまだ足りなかった。
まだ、やり残したことがあるのだ。
「いいかい、ちょっと待ってて。すぐに戻るから、ね」
そう言ってあなたをリビングのソファに座らせ、彼は書斎室に駆け込んだ。