第26章 生活編
「ああ、あっつ……もうだめかも……」
それからしばらく経った頃、気温が下がるどころか、このまま真夏へ向かいそうな天気が続いた。
ここは比較的新しいセキュリティのしっかりしたアパートだが、設置工事が必要なエアコンなんていう高級品は備え付けられていない。
申し訳ないためヴィクトルも最近招いていないし、週末はあなたが彼の自宅へ行くことが多かった。
まだ週の初めである今日は、仕事から帰ってきてすぐシャワーを浴び、髪にドライヤーをかけた。
「はあ、はあ、お風呂入っても汗だくで意味ないや」
仕方ないので最近は朝もシャワーを浴びている。人前に出る仕事なため、身だしなみは重要である。
適当に出来合いのものを食べたあと、あなたは倒れるようにベッドに大の字になった。
「あ……ヴィクトルからメールだ……」
暗がりでスマホの画面だけがまぶしい。
『名無しちゃん、お疲れ様。俺は今帰ってきたよ。最近暑いよね、部屋大丈夫? うちにいつでも来てね😟』
彼からの優しい文面があなたの疲れた心身に浸透する。
安心したら強い眠気がきて、そのまま寝落ちしてしまった。
朝になって飛び起き、彼に急いで返信をしたが、もう朝メールも入っていた。
「はあバカだ私……ヴィクトルいつも優しい……。ええっと、私は大丈夫だよ、っと。……ヴィクトル、ちゃんとエアコンつけて寝てるかな」
彼の誘いの言葉はありがたかったが、こんな例年のことで家に押しかけるのも何か違う気がした。
それにもうすぐ再び涼しくなると思っていた。
そう考えたあなたの期待を、雲一つなく照らす太陽は今日も裏切ることになる。