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美オヤジを誘って囲われて救われる話

第26章 生活編


後日、あなたは悶々としていた。
物件の話は、エージェントからまた連絡が来るという流れになっていたのだが。

自分がきっかけで物事がトントン拍子に進んでしまったらどうしようと、落ち着かなかったのだ。

「あのさ、ヴィクトル」
「ん? なんだい名無しちゃん」

彼の自宅で食事の後、キッチンで片付けを一緒にしていたとき。
何気なく彼のそばに立ち、背伸びをしてこっそり耳打ちをした。

「今度の内見の話なんだけど⋯⋯あの私が言っちゃったやつ、海とかそういう⋯」
「ああ、うん。あったね」

どうしてそんな内緒声なの?という不思議な顔をされたが、彼は穏やかに向き合ってくれた。

「あれって、すぐ決まったりしないよね?」
「もちろん。どうしてだい、もしかして不安になった? 大丈夫だよ、すぐ買ったりしないから」

ヴィクトルは一瞬驚いた顔つきをしたものの、あなたを安心させるように述べた。

ほわっとその温かな風が包みこんできて、肩の荷が驚くほど下りていく。

「ほんと? よかった⋯」
「ああやっぱり。ごめんね。俺があんな風に喜んじゃったから、怖くなっちゃったかな。まさか買うのかって。大丈夫だよ、あの規模は即決はしないから普通」
「あはは⋯だよね。いやそんなことないんだけど⋯少しだけ。だってさ、ヴィクトル目が本気に見えたんだもん」

深く息を吐きながら明かすと、彼はくつくつと喉を鳴らした。
なんだか段々と恥ずかしくなってくる。

「いやまあ本気だったよ。だってそれは、君に本気で欲しいって願われたら、きっとなんでも手に入れるからな俺は」
「ちょっ、だめだよそんなこと言ったらっ。じゃあどうするの? 私がヴィクトル〜ベンツほしいよ〜とか腕を揺すぶってきたら」

あなたが冗談っぽく尋ねると、彼は顎に手を当てて、妙に真剣に考える素振りをし始めた。

「もう、冗談だからね!」
「ははは! いや可愛いなぁと思ってさ。やっぱり君は俺にもっと甘えるべきだ。それが俺は一番嬉しいんだから」

大人の妖艶な笑みでまとめられると、どこまで彼の本気なのか見分けがつかない。

でも今回のことはひとまず、思いきって尋ねてみて心から安堵したのだった。
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