第25章 実家訪問編
彼も息があがり、部屋着のトップスの胸はゆっくり上下しているのに、そのまま譲らずに見つめ合う。
「俺も君に触れたくてたまらないよ⋯⋯でも、この部屋では⋯⋯! それにお父さんに約束したばかりなんだ⋯⋯!」
「ええ⋯? よく分からないよ⋯⋯ねえキスして」
焦る彼が少し可笑しくて、あなたは甘えるようにもう一度キスをねだった。
するとヴィクトルもひとまず素直に応えてくれる。
密着していると、彼の高ぶりも情熱も確かにあるようなのに、意思は固いようだ。
「明日しよう? ね? ここじゃまずい。もし止まらなくなったらどうするの?」
「⋯⋯もう。頑固だなぁヴィクトルは」
彼の困り果てた眼差しに気づきながら、それでも胸にもぐりこむと、優しく肩を抱き寄せられた。
「ふう。いい子だね。名無しちゃんは」
あなたは仰向けになった彼の胸板にそっと触れ、その温もりに安心したように目を細めた。
「どうしたの? 笑ってる?」
あなたの様子を気にしている彼の言葉に、さらに笑みがこぼれる。
「ううん。⋯⋯あのね、ヴィクトル。私今すごく幸せなんだ。ありがとう」
あなたは彼の胸からそっと顔を上げ、少し照れながらも、勇気を出して気持ちを伝えた。
ヴィクトルは一瞬目を見開いたあと、その言葉をゆっくりと受け止めるように表情を緩めた。
そして、愛おしそうに微笑む。
「⋯⋯うん。俺もとっても幸せだよ。嬉しいな。名無しちゃん」
二人は言葉の代わりにもう一度唇を寄せる。
密かな口づけを介して、今日一日の余韻を大切にするように、しばらくそのまま寄り添っていた。