第25章 実家訪問編
「無事に買えてよかったですね、ステファンさん」
「ほんとだよ。今日直せなかったら、また二人の標的になるかもしれないからな」
ステファンは愚痴りながらも、表情はからっとして楽しそうだ。
そんな恋人の父親を前に、ヴィクトルも彼らの生活模様が想像出来てきて、同じようにくすりとした。
大型ホームセンターではすぐに目的のものが見つかり、買い物はあっという間に終わった。
二人は帰宅のため、並ぶタクシーの列へと向かうはずだったのだが。
「このまま帰るのももったいないな。ヴィクトル、珈琲一杯飲んでいかないか?」
「えっ⋯はい!」
ヴィクトルの心は高鳴る。
最初の頃より緊張は薄れていたけれど、一対一で話す機会が巡ってくるのは、彼としても嬉しく望んでいたことだった。
広場のベンチで待っていると、ステファン自ら買ってきた珈琲を「ここの美味いんだよ」と言って渡してくれた。
ありがたく飲んでいると、ゆったりと時間が流れる。
「あのさ、さっきは悪かったな」
「なんですか?」
「兵役の話さ。いや、君はそういう話も大丈夫だと思ったんだが、名無しがああいう反応するとは、そこまで頭が回らなくてな。かわいそうなことしたと思って」
ステファンは大柄な背を丸め、気まずそうに白髪交じりの茶髪をかいた。
ヴィクトルは彼の素顔に驚いたが、真剣に見つめ返す。
「もちろん俺はどんな話でも大丈夫なんですが……名無しちゃんはまっすぐな人なので、ああいう時、感情を出してくれるんですよね」
「そうなんだよ。普段は我慢強くて、気持ちを見せない面もあるだろう? でもふとした瞬間に、ぶつけてくる時もあってな、俺はあの子のああいう表情に弱いんだ」
少し照れくさそうに優しい表情をする父の姿に、ヴィクトルは胸が掴まれる。
自分もあなたに対して、まったく同じように感じていた部分があったからだ。