第25章 実家訪問編
「でもせっかく泊まりに来てもらってるときに、なんで……ごめんねヴィクトル……」
「俺は大丈夫だよ、一日ぐらい入らなくても。こういうことはね、あり得ることだから」
そう気を遣ってくれるが、あなたは申し訳なさでいっぱいになる。
「ええ~でも私、今日お風呂入ろうと思ってたのに~ステファン、直してよ~」
「……私もシャワー浴びたいよお父さん~っ」
母と一緒になって父の腕を揺らす。
彼と泊まりで浴びないなんてことは、考えられない年頃だった。
すがられた父は、若干疲れたふうの真顔でヴィクトルを見やる。
「いいかヴィクトル。これが女性二人と住むということだ」
父がぼやくと、彼は思わず「はははっ」と吹き出していた。
直してくれなんて簡単に言ってみたものの、今日は土曜だしもう夕方だ。
修理を頼むのは現実的ではなく、父はホームセンターへ行くと言った。
こういうとき、リフォーム会社で長年現場マネージャーをしている父は頼もしい。
「仕方ない。じゃあ行ってくるか。あーあ、せっかく楽しく飲んでたのにな」
「俺も行きましょうか、ステファンさん」
「えっ……いいのか?」
自然な申し出に、父の表情は一瞬緩んだ。
あなたも本当にいいのかと聞いてみたが、ヴィクトルも笑顔で乗り気だった。
もちろん二人とも今は運転が出来ない。
だが少し飲んでいたとしても、酒が強い両者ならば外出も心配いらないように感じた。
あなたは変なことになったなと思いながら、母と一緒に二人を玄関で見送った。
「なんかホームセンターにタクシーでいくって、すごいよね。あっ、ヴィクトル、気を付けてね!」
「うん、行ってくるね。ちゃんと買って戻って来るからね」
父と出発した彼は、あなたに微笑み手を振って、出かけていった。