第25章 実家訪問編
「あなたねえ、もう軍隊の話やめてっていったでしょう。ほら見てよ、名無しは純粋なんだから、悲しがっちゃってるわよ」
「えっ、すまんすまん。いやそういう方向にいくとは……ええと、大丈夫だぞ名無し、ヴィクトルはどこにも行かないぞ? なあヴィクトル!」
「はい、絶対行きません。ほんとに大丈夫だからね」
大人三人に慌てて慰められ、あなたは情けなさと羞恥にさらされていたが、そこだけは譲れなかった。
一瞬変な空気になりかけたものの、父とヴィクトルは男同士の何かが芽生えたのか、前より打ち解けている。
あなたと父ステファンは40歳以上離れているけれど、彼らはちょうど親子の年の差で、大人同士コミュニケーションがスムーズなようだ。
リビングで酒を酌み交わす二人を、安心と微笑ましさで見やりながら、あなたは近くのキッチンへ向かった。
グラスに水を注ごうと、蛇口のレバーを上げたときだ。
水が、盛大に上下に吹き出した。
「きゃああぁっっ」
甲高い声が響き、男二人は何事かとあたりを見渡し、すぐに立ち上がる。
「名無しちゃん、大丈夫かい!」
「水が止まらないよ~! どうすんのこれっ」
母も含めパニックに陥っていると、ヴィクトルが「元栓どこ!?」と叫んだ。
父も急いでやって来て、まず水道の下の棚を開ける。そして栓を閉めたのだが、完全には止まらない。
あなたは上半身が濡れて呆然とする。
「びしょびしょになっちゃった……」
「ああ、本当だ、大丈夫大丈夫」
ヴィクトルが母から投げられたタオルをキャッチし、優しく拭いてくれている。
――なぜこんなことに。
「あーこれ、ここが原因じゃないな。ちょっと他の場所見てくる」
冷静な父が調べたところ、バスルームの洗面台下のパイプが原因だと突き止めたようだった。
戻ってくると、「配管の劣化で破損していた」と教えられる。
それを取り替えるまでは、浴室も使用できないらしい。
どうしてこの大事な時にと絶望しつつ、外見は綺麗だが築30年の家なら珍しくないと、皆は結論づけた。