第24章 対面編
曲は九十年代の有名な男女のバラードで、二人とも完璧にテンポを合わせながら、しっとり情熱的に歌い上げていた。
イリスもカラオケが好きらしく、歌唱力は抜群だ。
だがあなたがもっと驚いたのは、ヴィクトルの優しくとけこむような美声だった。
時折あなたのことを見つめ、愛情のこもった瞳で笑まれると、冗談ではなく倒れそうになった。
「や、やだすごい……うますぎ……格好良すぎ……」
動画を撮るのも忘れて一心に聞き入る。
やがて曲が終わり、ヴィクトルが戻ってくると、あなたは拍手をしながら立ち上がり、彼を迎えた。
「ヴィクトル、最っ高だったよ! もう私、目がハートになっちゃった!」
「ほんとう? どれ、見せて――」
彼はまだ酔っていないはずなのに、甘く囁きながら顔を近づけてくる。まるでステージのスターに射抜かれたような気分だった。
いや、彼はそれ以上に素敵な男だ。
皆に褒めちぎられたヴィクトルは、その後、なんと母ともデュエットすることになる。
大人達はこうしたカラオケバーが懐かしいらしく、お酒も手伝いテンションが上がってるようだ。
「うまい! 素晴らしい二人とも!」
「あらどうも〜。さっ、次は名無しの番ね」
「⋯⋯はいっ? 何言ってるのお母さん?」
「いいわそれ、行ってきなさいよ名無しちゃん、せっかくなんだから。ほら今なら誰も見てないわよ」
二人にそそのかされ、あなたは店内を見渡す。確かに客層は落ち着いてるし、皆最後に温かく拍手はしてくれるが、全員が全員プロみたいに上手いわけでもない。
「どうしようかなぁ⋯⋯」
「えっ、歌うの名無しちゃん、ほんとに? 君と一緒なら、俺も本気で歌うよ?」
ヴィクトルが途端に目をきらきらさせて口説いてきたので、あなたは迷う。