第23章 来客
「えっ……? お父さん……?」
驚愕的な眼差しでテーブルごしに振り向いてきたのはフロリアンだ。
あなたはすぐに口を覆い失言を悟る。
「あっ!! 違います違います、温かい雰囲気とか皆をまとめる感じとか、いいなぁと思って口走っちゃっただけで! まったくそういう意味では!」
「いいじゃないですか名無しさん、だって本当にこの人お父さんですから」
くすくす楽しそうにクリスが笑ってくれるが、あなたの背には汗がだらりと流れる。
だがそんな空気を吹き飛ばすように、ヴィクトルの快活な笑い声が響き渡った。
「あっはっはっは! お父さんか、確かにな!」
「……おい。なんだその嬉しそうな顔は。名無しさん、一般的にってことだよね? 俺がもう男として終わったとかそういう意味じゃないよね?」
「もちろん違いますよ!! フロリアンさんはとても素敵で立派な恰好いい男性です、ねえヴィクトル!」
藁にもすがる思いで隣を見やると、彼は柔らかな顔つきで頷いてくれている。
「そうだよ。お前は俺が知る中でもっとも男らしい男の中の男だ、フロリアン。安心しろよ、……くくっ」
「なんか腹立つなお前。根に持ってるのか? ……まあいいか。ははっ、お父さんっていう言葉はな、褒め言葉だから。お前にはまだ足りない受容と包容力の塊ってことだ、わかったかヴィクトル」
「お前こそ引きずってるじゃないか。俺の親父みたいなこと言うなよ、まったく」
呆れたふうのヴィクトルだが、すぐに二人の間の空気はいつもの軽さを取り戻し、失敗したと思ったあなたも胸をなでおろした。
「はぁやばいやばい。気をつけないと」
こっそり息をついて落ち着くと、場の雰囲気を切り替えるように珈琲タイムを提案した。
そうして皆でソファへ移動する流れになった。