第23章 来客
「美味しい~ピザ大好き!」
さっきまで集中モードだったこともあり、空腹に押されたあなたはぱくぱくと口に運ぶ。
三人の微笑ましい視線にも気づかないほどだ。
「嬉しいなあ。名無しさん結構食べるね。実は俺はね、いつも皆から買いすぎだって文句言われるんだ。でも多いほうがいいよね? 少ないより。だって喧嘩になっちゃうだろ?」
「そうですね。残ったらレンジすればいいし」
「そうそう! あ、ピザはオーブンのほうが美味いよ」
「そんなこと誰でも知ってるよ兄貴」
「こいつはピザにうるさいんだよクリス」
流れるような掛け合いに、あなたは食べながら吹き出しそうになる。
まじまじと男性三人を見ていると、久しぶりに集まったはずなのに、その空気は少しも変わっていないように感じた。
そんな中、あなたはふとヴィクトルの皿を見やった。するとピザはたくさん平らげたのだが、端にちょこんとキノコが残っている。
「え? なんか残ってるよヴィクトル」
「あ、ああ……ちょっと好きじゃなくて。これ」
彼が珍しく瞳をさっと逸らしたため、あなたは思わず顔を近づけた。
「そうなのっ? キノコ嫌いって知らなかったよ! 今まで普通に食べてたよねっ?」
「うん。食べれるよ。でもこのピザ屋のこの味が嫌なんだ」
彼はわずかに笑いをにじませながらも、真面目な顔で言い切った。あなたは初めて知る彼の情報に衝撃を受ける。
兄弟は黙って様子を見ていたが、太い腕を組んだフロリアンがおもむろに口を開いた。
「情けねえなぁ、そんぐらい食べろよヴィクトル」
「……ああ? お前の罠だろ、俺がこれ嫌いって知っててなんで入れるんだ! 彼女の前で格好悪い姿を晒したかったのか?」
「なんで俺がそんなことするんだ、さすがにもう食べれるんじゃないかと思って偶然入っちゃっただけだろう!」
「いやちょっと、喧嘩はやめてくださいよ。恥ずかしいでしょう40の大人が。しかもなんですかその幼稚な口論」
綺麗に食事を続けるクリスから冷静なツッコミが飛び、あなたはあたふたした。余計なことを言ったかもしれないと。