第23章 来客
「今日は”好きな女性とのデートで着ていく服”というお題だったので、こうしてみたんですが、いかがでしょうか。でもひとつだけ迷ってしまったんです。そのデートって一回目ですか?それとも二回目、三回目ですか?」
「えっ? そこまで考えてませんでしたね……ええと、じゃあ数回目で。普段のデートでいいですよ」
「普段のデートか……もう数年してないんですよね……一応雑誌やネットのスナップショットから、最新のトレンドを研究してはみたんですが」
彼が上質なロングコートを脱いで見せてくれた私服を眺めながら、あなたはこう考える。
クリスは想像以上に勉強熱心で、理屈から入るタイプのようだ。
根を詰めると少しだけ過剰になりがちなのだとも推測した。
「すごく方向性いいと思いますよ。クリスさん、クラシック寄りのスタイルお好きなんですね。こういうチェスターコート、すごくお似合いです」
「ありがとうございます。イギリスの20世紀初頭あたりの、ああいう紳士的な装いに憧れていて」
「いいですね、ブリティッシュトラッドですね。うちのお店もイギリス由来のスタイルをベースにしているので、そういうクラシックで上品な雰囲気にはすごく馴染みがあります」
彼の好きなものが分かるとアドバイスしやすい。
無理に合わないものを探すよりも、楽しむことが一番大事だからだ。
「じゃあこちらは、少し良いお店に行くときのデート用にしましょうか。スカーフは外して、ニットとブレスレットも今日はお休みで。ダークグレーのシャツに変えて、すっきりしたシルエットのパンツを合わせると、全体が締まって大人っぽく見えますよ」
乗ってきたあなたは、次々と彼にアドバイスを重ね、その都度着替えてもらった。
そして最終的に別室から現れたクリスは、余計な装飾が削ぎ落とされ、直線的なシルエットがより際立っていた。思わず目を引くほど、洗練された佇まいである。