第22章 出張編
愛し合ってからしばらく経った後も二人は離れがたく、ベッドの上で腕を絡ませていた。
寝そべる彼の肩に頬がつく距離で、あなたは瞳を大きくしている。
「ねえねえ、出張どうだった? 話は聞いてたけど、楽しかった?」
「ははっ。あんまり楽しくはないね、仕事だから。でもなんというか、今回は雰囲気が違ったよ」
彼は顔を向けてきて、まだあなたに触れ足りないように頬を撫で、見つめてくる。
「そうなの?」
「うん。自分のね」
含み笑いをするヴィクトルが気になったが、あなたは首を傾げるばかりだ。
「ああ……やっと家に帰ってきた。嬉しいな。一人でホテルにいるの、本当につまらないよ」
「そうだよね、わかる。でもビデオで見せてくれた部屋、すっごい豪華だったね!」
すべてに感動する年頃のあなたがはしゃぐと、彼は微笑ましそうにその様子を眺めていた。
「ふふ、可愛いな。君と一緒なら楽しいんだけどなぁ。…ああそうだ、でも俺達のハネムーンはもっと豪華になると思うよ」
思わせぶりにウインクされて、あなたは急に現実に引き戻され頬をぽっと染めた。
――ハネムーン。彼の口からそんな言葉が出るとは。
「は、はね、ハネムーンかぁ。……ほんとに私達も行くの?」
「当たり前でしょう。えっ、行かないの?」
彼に顔をのぞきこまれて、ぶんぶんと首を振る。
結婚するからには、そんな夢のような体験も普通なのかもしれないが。
彼と一緒にどこか旅をするなんて、あまりに幸せなことすぎて、まだ遠いことのように思えた。
「行きたいよ……初めての二人旅。へへ」
「よし! じゃあ行くぞ名無しちゃん!」
急に元気の出た四十歳の男は、思い出したようにベッドから抜け出した。
あなたは何事かと、ガウンをさらっと羽織るヴィクトルを見やる。